『わたし色の世界』

 

世界は真っ黒だと思いながら、人ごみを歩いていた。

 

前を歩く男の人のポケットから、ライターが落ちた。

それを拾って、その人に渡した。

受け取って彼は、頭を下げて言った。

「すみません、ありがとうございます」

世界は、わたしが思うより綺麗なのかもしれないと思った。

 

少しだけ澄んだ世界。

 

駅の角で飛び出してきた誰かと、肩がぶつかった。

その人は舌打ちをして、そのまま通り過ぎた。

 

真っ黒な世界。

 

ふと気付いた。

世界の色は、わたしの心の色だったんだということ。

 

わたし色の世界。